cat disease

はじめに

猫の慢性腎不全は猫の病気で最も多い病気の1つです。特に冬になりやすい病気ですが、「1週間ほどお水を飲まない」「徐々にご飯を食べなくなってきた」などの主訴で来院され、血液検査の結果、腎臓を評価する数値が非常に悪化していることも少なくありません。猫は犬のように吠えたりしないのでなかなか体調の変化に気づきにくいですが、お水を飲んでいるか、ご飯を食べているかなど細かい変化にはなるべく気を配るようにしましょう。

慢性腎不全とは?

慢性腎不全とは、名前の通り、数ヶ月から数年をかけて腎臓の機能に障害をきたしていく病気です。腎臓は造血や代謝、尿の生成など生きていく上で大切な役割を担っているので、腎臓が障害されることにより様々な症状が出てきます。慢性腎不全において、腎臓は障害を受けると回復することはなく、残った機能を維持していくこととなります。

慢性腎不全の原因は?

詳しい理由はわかっておりませんが、腎臓への負荷が原因とも言われています。猫はもともと砂漠や高山などの水の少ない環境で生きる生き物で、腎臓の強い動物と言われています。しかし、猫の腎臓にはよく働き過ぎるあまり、その代償として、年をとるとともに大きな負担がかかってしまいます。このため、ほとんどの猫は年をとると腎臓機能が低下してしまうと考えられています。

慢性腎不全の症状

腎不全には様々な症状が見られます。

多飲多尿

まず腎不全になると尿量の増加します。これは腎臓の機能が低下し、水分の再吸収が不十分になるため、飲み水で補おうとするため、尿量が増えます。人もそうですが、お水を沢山飲むと尿が薄くなります。猫も同様、薄い尿が出るようになります。

脱 水

腎不全が進行すると、尿量はさらに増えていき、どれだけ飲んでも水分が足りなくなります。そして、飲水量だけでは体の水分を十分に補えなくなります。 この状態を脱水状態といいます。この状態になると体がだるくなり、活動性が落ち、じっとしていることが増えてきます。

尿毒症

脱水が進行すると尿毒症となります。腎臓は代謝機能を備えていますが、この機能の低下により排泄できない老廃物が蓄積し、食欲が落ちたり、嘔吐の頻度が増えたりします。

貧血

腎臓の機能の低下により、本来作られるはずの造血ホルモンが欠乏します。 元気がなくふらふらしたりします。貧血により腎臓は血圧を上げようとし、体中は高血圧になりますがさらに腎臓に負荷をかけてしまうことになります。

慢性腎不全の診断

血液検査、尿検査、超音波検査など総合的に確認し、診断を下します。

慢性腎不全の治療

冒頭にも述べましたが、一度壊れた腎臓は回復しません。まずは状態を回復させ、腎臓の機能を守っていくことが重要になります。状態が悪い猫は入院し、点滴治療を行うことにより脱水改善や尿毒症をやわらげます。さらに、腎機能の低下により造血ホルモンが欠乏している猫に対しては造血ホルモンを投与します。普段の生活においても、食事中に含まれるタンパク質やリンは腎臓に負担をかけるのでタンパク質やリンの含有が少ないご飯をあげることで対策につながります。慢性腎不全の対策として、定期的な健診が推奨されます。この病気は徐々に進行していくので定期的に血液検査や尿検査を実施することで早期発見・早期治療に結びつきます。